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パシフィックノースウェストバレエ団

1週間のエイリーカンパニーお休みの間、シアトルに行ってきた。私の妻であり振付家のジェシカ・ラングのアシスタントとして、彼女のソロ作品「コーリング」をパシフィックノースウェストバレエ団に振付提供するお手伝いをした。

アメリカを代表するバレリーナとして活躍された、同バレエ団プリンシパルダンサー、カーラ・コーベスさんが引退することになり、6月7日に行われる彼女の引退公演にて、このジェシカ作品「コーリング」がカーラさんによって踊られる。カーラさんは親切、フレンドリー、そして明るい方で(私の知っているほかのブラジル人の友人たちのように)、終始とてもいいエネルギーが流れた中でリハーサルをすることができた。

「コーリング」はとてもスピリチュアルな振付作品であり、奇をてらうようなテクニックなどは全くない。それだけにちょっとした動きのニュアンスやクオリティなどが重要であり、それを振付家の意図するように習得するのは容易なことではない。だが、まるでカーラさんの為に創られたかのごとく、彼女の踊りはこの作品に見事にフィットした。彼女の中から溢れ出る表現力、彼女が今まで歩んできた人生とキャリアの重みのようなものがこの踊りに表れていて、非常に美しく大きな感動があった。

パシフィックノースウェストバレエ団の芸術監督は、ニューヨークシティバレエ団で長年プリンシパルダンサーとして活躍されたあのピーター・ボールさんである。私も渡米した90年代後半には何度もピーターさんの舞台を観たものだ。ピーターさんがジェシカの作品に惚れ込んで下さり、カーラさんの引退公演に上演したいということで今回のご依頼を頂いた。芸術監督であるそのピーターさんが直々にこの作品のバレエマスターとなってくださり、1週間に渡ったリハーサルにずっと立ち合って下さった。ジェシカの意図する振付のすべてを把握し、多大なるケアを持って携わって下さった。

実は「コーリング」は今から10年ほど前に、ジェシカが私の為に創作してくれた作品である。彼女の恩師であった当時のジュリアード音楽院ダンス科ディレクター、ベンジャミン・ハーカービー氏が亡くなり、彼がジェシカに残して下さった一通の手紙がこの作品のインスピレーションとなった。当時、誰からも依頼されたわけでもなく、抑えることのできなかった彼女の創作欲求にしたがって出来た作品であり、イーストサイドにあるフィットネスクラブのとても小さなスタジオで、ジェシカと二人で創り上げた作品である。私たちにとって想入れ深いこの「コーリング」が、10年という年月を経て、今回はカーラさん、ピーターさんという素晴らしいアーティストの方々に渡され、とても歓喜深いものがあった。

ちなみに現在「コーリング」はジェシカのカンパニー、ジェシカラングダンスのレパートリーとして上演中である。ジェシカラングダンスで「コーリング」を踊るのは私とジェシカが愛してやまない日本人ダンサー、木村佳奈さんである。私たちにとっては佳奈さんこそが「コーリング」であり、この作品を一番に代表してくれる素晴らしいダンサーである。

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