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南アフリカ Week-3・ケープタウン

ヨハネスブルグでの2週間を終えて、南アフリカ第二の都市ケープタウンに到着した。空港からバスで街に入ると、テーブルマウンテンがドーン!と町の中心にそびえるのが窓から見えて、まず圧倒される。早速1日だけのオフを利用してケープ半島を回ったが、見渡す限り大西洋に囲まれて、喜望峰など、山あり平原ありとその自然の壮大さと美しさに、ただただ感動するばかり。最後にハウト湾を見下ろす高台から、夕陽が沈むのを眺める。。と、同時に空にはカラフルな虹が大きな半円を描いて現れる!。。スピーチレス。。。ケープタウンは、リオデジャネイロの山々、サンフランシスコのベイ、ニューオリンズの街並みをミックスしたというのが、私の受けた印象であるが、それに加えて、地球の壮大さ、人間を超越したの神懸かりのパワー、のようなものを感じられる、なんとも神秘的な場所であった。

エイリーカンパニーは現在まで6大陸は71カ国、都市数は数えきれないほどの場所で公演をしてきたが、その長い歴史の中でも、ケープタウンでの公演は今回が初めてであった。前回17年前の南アフリカ公演はヨハネスブルグのみであったこともあり、今公演におけるケープタウンの人々の関心は大きい。3000人収容する劇場が連日ソールドアウトであり、毎日熱狂に包まれた中で公演をさせて頂くことができた。ノンストップできたヨハネスブルグでの2週間を終えて、身体的な疲労は他のダンサー達も含めてピークに達しているのだが、このケープタウンでの1週間も止まることはない!むしろスケジュール的にも一番ハードな1週間となった。

今週は全8回公演で、1日2回公演が3日も連続で続いた。今週私はその全8回公演に出演しただけでなく、エイリー氏振付「夜の生き物」で今回初めてソリストのパートを踊らして頂くことになり、そのデビューがあった。もちろんその為に、さらなるリハーサル、フォーカスと体力を費やして万全に努めた。その上、地元記者の為のプレスリハーサル、子供達のアウトリーチ指導、写真撮影、初日公演レセプションなどなど、毎日が盛りだくさんであった。

この南アフリカツアー、私達のメインスポンサーとなって下さったのが、アメリカの2大企業、「バンク・オブ・アメリカ」そして「ブルームバーグファンデーション」であり、彼らのサポートのおかげで、今回17年ぶりの南アフリカ公演が実現した。私がここで面白いなぁと感じたのは、初日公演レセプションが、通常と少し違うものであったということである。というのは公演後のレセプションが、「バンク・オブ・アメリカ」と「ブルームバーグ」が別々の部屋で開かれたのである。劇場ロビーに隣接するパーティー会場、1階が「ブルームバーグ」、2階が「バンク・オブ・アメリカ」で同時にあり、ダンサー達も2つのグループに分けられた。大変なのは私達の芸術監督のバトル氏、まず1階でスピーチをしプレス写真撮影、そしてすぐに2階に行きまたその繰り返し!私は興味本意でバトル氏の後をついていき、両方のレセプションに立ち会ってみてた。パーティーのデコレーションはもちろん、なんと出される食事のメニューも違うものであった!。。お祝いのレセプションくらい皆一緒にやろう!と私は気持ち的に思うのであるが、やはりそこはビジネスが関わっておりそうシンプルにはいかないようだ。この2企業にとって私達のパフォーミングアーツをサポートすること、このイベントそのものもビジネスの一環であり、私達にとってもそのサポートは必要であり、それぞれ個別に対応されなくてはいけないということである。が、レセプション自体はとても賑やかに進められ、私自身がお話をした両企業の方々は、皆さん私達の公演を心から堪能してくださった様子、たくさんの賛辞を頂いた。

怒涛のように流れた1週間であり、正直もう倒れるか?!と感じた瞬間もあったが、体力精神力勝負!エネルギーを出して乗り切った!

不思議なもので、そのように疲労もピークに達して追い込まれた状態のときこそいい踊りが出来る、というか、そういう「感覚」を感じるときがある。肉体的にはもう動けない!という状態に達してるはずであるのに、すべてを解放して、肉体を超越して精神の世界に達するというのであろうか。今回も毎公演「レベレーションズ」最後アンコールの時、お客様の熱烈な手拍子にも載せられて、そのような不思議な感覚に包まれながら、「明日はない!」というつもりで全力魂を込めて踊りきることができた。

最終日、南アフリカツアーいよいよ最後の公演。幕開け作品は先にも述べた「夜の生き物」である。幕が上がる直前、カンパニー副芸術監督の茶谷正純氏が私達ダンサーを集めて話し始める。「みんな、素晴らしい南アフリカ公演をどうもありがとう、ワンダフルジョブ!この最後の公演の幕開けを「夜の生き物」で飾ること、天から見ているアルビンエイリーさんはきっと喜んでると思います。アルビンさんにとって「夜の生き物」は大好きな作品でした。みんなこの作品でとても輝いていているから、本当にアルビンも幸せだと思います。どうもありがとう!Have a fun!」と言うようなことを伝えられた。

アルビンエイリー氏に出会うことが出来なかったこの世代の私も含めたエイリーダンサー達にとって、茶谷さんの存在、言葉、シェアしてくださるすべては計り知れず大きい。茶谷さんは、40年にも渡りエイリーカンパニーに捧げ、また支え続けてこられた。エイリーカンパニーの宝である。エイリー氏が亡くなってすでに25年経った現在でも私達がこうして世界を舞台に活躍出来ていること、そのすべてはエイリー氏から来ているということを、茶谷さんは時々私達に語りかけて、いつも決して忘れているわけではないが、思い出させてくださる。今回の開演前のお言葉もそうで、私達ダンサー達が、エイリー氏に対する多大な尊敬と感謝を今一度感じられる、とても大切な瞬間であった。ダンサー達全員の心はさらに熱くひとつとなり幕が開いた。「夜の生き物」は「レベレーションズ」に次ぐエイリー氏の人気作品で、私も入団してから、何度となく踊ってきて、大好きな作品である。デューク・エリントン氏のジャズ音楽に乗って、腰を大きくスイング、ダンサー達の身体がしなる。南アフリカ最後の公演に茶谷さんパワーが加わって、ダンサー達もいつにも増して楽しそう、とてものびのびとしてみんな楽しそうに踊っていた!(私ももちろん楽しんで踊った!)

こうして3週間に渡る南アフリカツアーが終了した。実に内容の濃い、たくさんの感動と喜びがあった3週間、あまりにも色んなことがあり、正直すぐにはそのすべてをダイジェスト出来そうもない。

ただ今一番感じることは「ダンス」が連れてきてくれたアフリカ、であるということ。18年前に「世界で踊りたい!」という思いを胸に日本からニューヨークに渡った時も、さすがにアフリカで踊る!なんて現実的ではなかった。「ダンス」は今までも私をたくさんの場所に連れて行ってくれて、実に多くの人々との出会いと感動を与えてくれた。この思い出深いアフリカツアー終了を機に、これからもまた心新たに「ダンス」を精進していきたいと思う。そしてその「ダンス」が、次は私をどんなジャーニーへと導いてくれるのかを楽しみにしている。

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