アメリカンバレエシアター・ジェシカ・ラング世界初演
私の妻であり振付家のジェシカ・ラングが、アメリカンバレエシアター(ABT)の秋季公演にて世界初演作品「Her Notes」を発表した。リンカーンセンターはデビッドコーク劇場(前ニューヨークステイトシアター)での公演。
このとてもスペシャルな日を見逃すことは出来ず、エイリーカンパニーのツアーから1日だけお休みを頂きニューヨークへ戻った。エジンバラからニューヨーク、ニューヨークからローザンヌへと強行スケジュールであったが、ジェシカの特別な瞬間を一緒に過ごすことが出来て十分に価値があるトリップであった!

Gillian Murphy and Marcelo Gomes in Jessica Lang's ‘Her Notes.’ Photo: Rosalie O’Connor
今回のABTへのプレミアはジェシカにとって、また私達夫婦にとってとても特別な意味を持つ。
1999年9月、ジェシカが初めてプロの振付家としてデビューしたのが、ABTのジュニアカンパニーに振付をした「オブリビオン」であった。その発表の2週間前に私とジェシカは出会い、彼女が私をその公演に招待してくれた。私が観たその1999年版「オブリビオン」のキャストメンバーには、今を輝くプリンシパルダンサー、ミスティ・コープランドさんやディビット・ホールバーグさんがいた。それ以来現在まで17年間にわたり、ジェシカをアシストし、90以上に渡る彼女の作品のすべてを観て、また創作過程に携わってきた。彼女の振付家としてのキャリアの第一歩は、私とジェシカの第一歩でもあった。
過去17年間の私とジェシカのキャリアにおいても、ABTは特別な存在である。ジェシカは「オブリビオン」以来その後数多くの作品をジュニアカンパニーに振付する。2003年から私がエイリーカンパニー入団する年まで、ABTの教育プログラム「メイクバレエプログラム」講師としてふたりで共にずっと教えてきた。そのほかにもABT付属学校、JKOスクールの前身アソシエイトプログラムの時代からジェシカはモダン講師として指導、私がジェシカの代わりとして教え始めたのもこの時代である。JKOスクールが設立されると、その校長に任命されたフランコ・デビータ氏が私のエイリースクール時代の恩師であったご縁もあり、デビータ氏の誘いを受けてJKOスクールの学校公演に私も振付させて頂いた。その流れで私はABTのニューヨークサマープログラムでモダンクラス講師として指導したり、また2008,2010年とジェシカ作品「スプレンディドアイソレーションIII」がメトロポリタン歌劇場で発表された時は、私がもちろんアシスタントを務めたりと、ABTとのヒストリーは長く、私達のキャリアにとってとても大きな経験と影響を与えた。

“Her Notes” by Jessica Lang Photo: Rosalie O’Connor, courtesy of American Ballet Theatre.
17年の月日を得てジェシカが発表した「Her Notes」は、フェリックス・メンデルソンの姉、ファニー・メンデルソン作曲Das Jahr (The Year)の美しい音楽に乗せて10人のダンサー達によって踊られる。音楽性とリリシズム、インテリジェンスとジェシカの振付家として択一した才能と彼女の長いキャリアの経験、そのすべてが詰まった最高の作品となった。 またこの作品キャスト半分のダンサーは、過去に私とジェシカの生徒だったダンサー達であり、99年版「オブリビオン」のキャストであったあのミスティ・コープランドさんも「Her Notes」のキャスト、素晴らしい踊りを披露してくれた!

本番当日は、ジェシカと共に朝8時半から劇場入り。舞台装置と照明のチェック、ダンサーが入り最後の舞台稽古と立ち会った。


本番は大成功!ダンサー達が素晴らしい踊りをしてジェシカの作品を見事に美しく表現してくださった。スタンディングオベーションの観客席、幕が閉じると芸術監督のケビン・マッケンジー氏をはじめABTスタッフ、ダンサー達皆で祝福の嵐を頂いた!


ジェシカ、ABT芸術監督ケビン・マッケンジー氏(中央)、リードカップルを踊ったマルセロ・ゴメス氏(左)とジリアン・マーフィー氏(右)と共に。
ジリアンさんを迎えにきたイーサン・スタイフル氏とも久しぶりに再会。ジェシカ作品の賛辞をいただいた。

最後にジリアンさんともポーズ、私のキャリアハイライトとなった(笑)?!